資本論第1部 第20章 労賃の国民的相違の解説

資本論第1部 資本の生産過程

 

第6篇 労賃

 

第20章 労賃の国民的相違

 

国民文庫版では第3巻にあたる。

 


第20章労賃の国民的相違の解説。


労賃の国際比較の前提。


労働力の価値の大きさの変動を規定するすべての契機を考慮しなければならない。


全ての契機とは以下の項目を含む。


自然的、歴史的に発展した第一次生活必需品の価格と範囲、労働者の養成費、婦人・児童労働の役割、労働の生産性、労働の外延的および内包的大きさなど。

 

まったく表面的な比較のためにも、


まず第一に、


各国における同じ産業の平均日賃金を同じ長さの労働日に還元することが必要。

 

例えば、A国では1日10時間働き、1万2千円

 

対して、B国では1日10時間働き、6千円という風に。

 


さらに日賃金を調整してから、時間賃金を出来高賃金に換算しなければならない。


労働の生産性についても、


労働の内包的な大きさについても計測器になるのは出来高賃金だけだからである。

 

出来高賃金に変換しているのだから、労働の強度がモノを言ってくる。


労働の強度の平均は、各国で違う。


イギリスに代表される当時の資本主義先進国の労働は、

 

他国の労働に比べて、強度の大きい国民的労働としてカウントされる。

 


これはいわゆる特別剰余価値のようなものであり、


商品の販売価格をその価値まで引き下げることを競争によって強制されない限り、


賃金(労働力の価値の現象形態)を出来高賃金ベースで考えた時の、

 

生産性の高い労働者に値する。


これがイギリスの賃金水準が高い理由その1となる。

 


続いて、

 

マルクスは資本主義が発展している国の方が貨幣の価値が相対的に低いと論じる。

 


『貨幣の価値が相対的に低い』とはどういう意味か?


例えば、先進国イギリスでは1日12時間労働で労働者一人あたり1万2千円分の商品を生産するとする。


フランスやスイス、つまり相対的な後進国では、1日12時間労働で6千円分の商品を生産する。


イギリスでは、12時間で1万2千円

フランスやスイスでは12時間で6千円。

 

逆に言えば、イギリスでは、千円で1時間の労働(交換価値の源泉は労働)しか購入できない。

 

フランスやスイスでは千円で2時間の労働を購入することができる。

 

つまり、イギリスでは、貨幣の価値が相対的に低いのである。

 

ゆえに、イギリスではより多くの名目賃金がなければ労働力の再生産ができない。


これがイギリスで賃金が高い理由その2。

 


また、資本主義先進国の方が、

 

剰余価値に比べての労働の価格、生産物に比べての労働の価格が安い。


なぜなら、資本主義先進国では、


総労働における必要労働の比率が小さく、剰余価値率が高い。


つまり、いわゆる相対的剰余価値が高い。


換言すれば、資本の有機的構成(技術的構成)が高く、労働者一人当たりの生産性が高いからである。

 

 

資本論の全体像】
第1部 資本の生産過程
第2部 資本の流通過程
第3部 資本主義的生産の総過程 1、2巻の理論がどう現実の中で顕在化するか、および利潤の分配についての考察