資本論第1部 第4篇 第13章 第9節 工場立法(保健・教育条項) イギリスにおけるその一般化の解説
資本論第1部 資本の生産過程
第4篇 相対的剰余価値の生産
第13章 機械と大工業
第9節 工場立法(保健・教育条項) イギリスにおけるその一般化
第9節工場立法(保健・教育条項) イギリスにおけるその一般化について解説する。
この節では、
イギリスにおいて工場立法が一般化してく過程について論じられている。
まずは保健条項について。
いくつかの清潔維持方法や、換気や、危険な機械に対する保護などの規定が述べられているにすぎない。
つまり、資本主義的生産様式では、ごく簡単な清潔保健整備でさえ、国家の強制法律によって命令されなければそなえられない。
次に教育条項について。
初等教育を労働の強制条件として宣言しているが、その成果は、教育および体育を、筋肉労働と結びつけることに帰着する。
教育の目的はあくまで労働力を作ることにある。
続いて展開される以下の記述が本節で最も興味深い点と言えよう。
大工業の矛盾とは、
一方で、生産基盤の不断の変転、つまり生産に用いる技術の進歩により、
労働者に必要とされる技能が絶えず変化する。
故に、「全体的に」発達した労働者を要請する。
他方では、協業による生産効率の最大化を目的とするため、部分労働化が進展する。
生産ラインのある一点に特化した専門化、タコツボ化が起こる。
つまり、一方では労働者に全体的に発達したスキルを求めるの対して、
他方では、部分労働化が進展するのだ。
前者の歴史的背景について説明されている。
前近代においては、技術の基礎は保守的であり、変化することはなかった。
技術的基礎は、職人の秘儀によるもので、それはいわばヴェールに覆われているようなものであった。
そして、その伝統的な生産様式を維持することが産業階級の存在条件だった。
ところが、大工業時代では、
秘儀(生産の技術的基礎)を覆い隠していたヴェールは引き裂かれ、
社会的労働の種々雑多は、科学的計画の基に分解され、要素分解されていく。
また、大工業時代は、生産の技術的基盤が不変ではない。
生産の技術的基礎は、自由競争下の技術開発競争に晒されることもあり、
イノヴェーションが恒常的に起き、可変である。
社会の中での分業も常に変化し、
資本と労働者の大群を、一つの生産部門から他の生産部門へと投げ出し入れる。
したがって、大工業は、
労働の転換、機能の流動、労働者の全面的可動性をその本性とする。
資本制的生産様式は、技術変化に対応できる
全体的に発達した知性/能力を持つ個人をつくることを要請する。
そのために、技術学校をつくり工学や農学が教えられるようになる。
全体的に発達した個人を作る唯一の方法として教育システムが確立されていく。
資本制的生産様式を駆動されるため、
イギリス工業立法が初頭教育を工場労働と結びつけることになる。
つぎに、家族制度と工場立法の関係についてマルクスは論じる。
工場立法は、旧い家族関係の崩壊させる。
工場立法が家内労働を規制するかぎりでは、親権を侵害し、それは子供を最終的に保護
したわけではなく、
旧い家族関係を崩壊させながら、児童にたいする資本主義的搾取を乱用する道を開いた。
また次第に工場立法が拡張されていく。
最初は、紡績業や織物業に適応される法律だったが徐々にあらゆる産業に適用された(法律の実行を委任された都市や地方の官庁の手のなかで死文になることもあったようだが)。
その理由としては、
資本はある部面で国家の監督を受けると、他の部面で無節制に埋め合わせをつけようとする点。
つまり工場立法の効果を打ち消すような力が働くこと。
または、資本は競争条件の平等を求める点が挙げられている。
つぎに、鉱山労働に関する裁判記録が紹介されている。
鉱山労働における児童・婦人労働に関する法律はできたが、その実効性が乏しく、
裁判になっている。
ここでは、資本家による労働者の搾取という本来的な論点から、
鉱山労働と工場労働のどちらが厳しいか?という論点にすり替えられている。
労働者には全体観がなく、工場にも鉱山にも共通して存在する搾取構造があることを理解しない。
【資本論の全体像】
第1部 資本の生産過程
第2部 資本の流通過程
第3部 資本主義的生産の総過程 1、2巻の理論がどう現実の中で顕在化するかを記述。