『アフタービットコイン』中島 真志

 

『アフタービットコイン』中島 真志


 

仮想通貨とブロックチェーンに関する包括的な知識が得られる。

 

この分野では今所のこの本が一番良さげか。

 

優れている点。

各国の中央銀行や民間銀行のブロックチェーンをつかった取り組みがわかりやすく紹介されている。

例えば、なぜブロックチェーンを使うと国際送金が安くなるのか、大変、わかりすく書かれている。

 

国際送金が安くなる理由。

 

⑴送金プロセスに人手を介さずに電子的に行うこと

 

⑵SWIFTの電文送信のコストが不要なこと

 

⑶瞬時に取引内容が確認できることによる自行がコルレス先(海外の銀行のために決済を代行する銀行 )にもっている残高を確認する必要がないこと

 

 

 

 

また、ビットコインの欠点や技術的な限界点などの記述も大変明快だ。

 

ビットコイン潜在的な51%攻撃(悪意のある参加者がネットワーク全体の発掘能力の50%以上を支配して、不正な取引を行うこと)から自由になることはできないと思う。

 

マウントゴックスの事件はハッキングというよりも経営者自身が客のビットコインを横領していたわけだけど、仮にいくらビットコインの仕組みが堅牢でも、貨幣が流通するインフラである取引所にスキャンダルがたくさん起きるはマイナス点である。

 

 

 

貨幣というのは必然的に合意形成を必要する媒体だ。貨幣が社会的なものであり、その性質から人と人をつなげる役割をしている以上、合意形成は不可避である。だから政治がない貨幣はありえない。なぜなら貨幣とは政治的(その本質は集団の秩序を作り出すこと)であり、社会的なものだから。

 

ビットコインは集団の秩序を作り出す原理(つまり政治)が、弱肉強食のネオリベラルな自由主義の経済観に依拠しているだけだ。それを政治からの自由、アナーキーズム、国家の介入からの自由などと言うことはできるかもしれないけど、実態は、単に、ネオリベラリズムの焚きつけられた、ある種の経済自由主義者たちを一時的に惹きつけているだけにすぎないように思う。