ワールドゴールドカウンシル(WGC)の金需要/供給レポート2020年第1段

ワールドゴールドカウンシル(WGC)が年に4回出している金需要に関するレポートをまとめて、ブログで報告していこうと思う。

 

ワールドゴールドカウンシル(WGC)のレポートが出ると、翌日の日経新聞には、WGCのレポートを元に金についての記事が掲載される。

 

最近だと、1月30日に英語でレポートが出ており、


翌日、1月31日の日経新聞朝刊の金に関する記事が掲載された。

 

日経の記事でも、WGCのレポートに基づいて、記事を書いていることは冒頭で語られている。


2020年最初のWGCレポートを要約を紹介したいと思う。

 

金の年間需要と年間供給はおおよそ4000トンでバランスしている。

 

需要が5000トン、供給が5000トン。

 


需要の内訳は、

半分が宝飾品で、

1/4が投資、

残りの1/4が中央銀行買いとテクノロジーである。

 

供給の内訳は、

大半が3/4が金鉱山から採掘で、

1/4がリサイクルである。

 


最も大事な指標は供給量で、世界の供給量がマイナスに転じる傾向があれば、

金価格が上がる蓋然性は高くなる。

 


今のところ2019年は採掘された金量が3463.7トンと、前年比でー1%であったが、2020年は上向くとの予測が出されており、長期的に金の供給量が減っていくような傾向は読み取れない。


また、2019年は金価格が大きく上昇した年であり、それに伴って、リサイクル量が1304.1トンと前年比で11%上昇した。


金の価格が上昇するとリサイクル量が増大する傾向があり、これが価格上昇を抑える。

 

 

次に需要だが、


もっともポーションの大きい、宝飾品需要が2107トンと前年比で7%減少した。


宝飾需要の半分強がインドと中国によって占められているが、


どちらの国でも、前年比と比べて、インドで544.6トン(-9%)、中国で686.3トン(-7%)需要が大きく低下した。


理由は、昨年後半、金価格が上昇したこと最も大きい。

 


しかし、金投資と中央銀行買いが堅調だっため、金価格が下落することはなかった。

投資面を見ると、


バーとコインなどの実物の金への需要は前年比と比べて低下したものの、


ETF買いは増加した。


これが昨年比から426%増の401.1トンとなった。

従来は北米のファンドからの購入が多かったようだが、

昨年はヨーロッパのファンドから金ETF買い目立った。

 


中央銀行に関しては、


ロシアと中国、インドなど非西洋の国々の米国債離れ及び金買いが顕著である。


米国と政治的に対立関係のある国々の中央銀行が金を購入していると読むことができる。


米国は国家財政赤字の問題を抱えており、米国債潜在的な不安定制が危惧される。

 

また米国債金利の低下も、金購入への機会費用を低下させるようになる。


おそらく西洋諸国も米国債から、安全性の高い金へシフトしたいという思いはあるだろうが、


米国との関係悪化を恐れて、米国債離れ、及び金買いを公然することができない状況であると考えられる。


ロシアや中国など米国に忖度しない国々の金が目立つと言える。


以下の地図をWGCのレポートから掲載して、本稿をとじたいと思う。

 

色が付いている部分が、中央銀行が金を購入している国。

 

まるで冷戦時代を彷彿とさせるよう。

 

参考資料

Gold Demand Trends Full year and Q4 2019

 

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資本論第1部 第22章 剰余価値の資本への転化 第2節の解説

資本論第1部 資本の生産過程

第7篇 資本の蓄積過程

第22章 剰余価値の資本への転化

第2節 経済学の側からの拡大された規模での再生産の誤った把握

 

 

第2節は数ページの短い節。


アダムスミスの誤りとは、個別的資本は不変成分と可変成分に分かれるとしても、社会的資本は結局可変資本、つまり労賃の支出に帰着すると考えたこと。

 

実際には、不変資本と可変資本とに分けられなければならないとマルクスは主張する。


マルクスように、可変資本と不変資本を明確に分けることで、剰余価値の源泉が可変資本の剰余労働のポーションから生じていることが明確なる。

 

対して、アダム・スミスの資本に転化される部分は、全部労働者によって、消費されるという命題は、資本家よって利用され、結局、不払い労働の搾取を構造的解明するには不向きとマルクスは考えた。

 

資本論の全体像】
第1部 資本の生産過程
第2部 資本の流通過程
第3部 資本主義的生産の総過程 1、2巻の理論がどう現実の中で顕在化するか、および利潤の分配についての考察

 

資本論第1部 第22章 剰余価値の資本への転化 第1節の解説

資本論第1部 資本の生産過程

第7篇 資本の蓄積過程

第22章 剰余価値の資本への転化

第1節 拡大された規模での資本主義的生産過程 商品生産の所有法則の資本主義的取得法則への変転

 

 

 

今回は第1節の解説です。

 

剰余価値の資本としての充用、つまり剰余価値の資本への再転化を”蓄積”と呼ぶ。


蓄積のための条件としては、それを可能にする剰余生産物が社会的に追加生産手段と追加生活手段として存在することである。


更に、追加的労働力(可変資本)と追加的生産手段(不変資本)が合体されることで、剰余価値の資本への転化が完了する。


第22章の第1節は難解だと思う。

 

読解の鍵となるキーワードはテキストに何度も出てくる”私有法則の内的な不可避的な弁証法”である。

 

これは端的に言えば、資本制的生産様式の”形式”と”内容”の乖離のことを指している。


形式とは平たく言えば、外観、外見のことである。


資本制的生産様式は、外見と内容が違うとマルクスは言う。


これは喩えるなら、清涼飲料水でラベルには健康に良いと書いてあるが、実際の中身の液体は、体に悪いものが入っている清涼飲料水をイメージして頂きたい。


形式(外観)を見ると、そこではフェア、つまり公平な等価交換に基づく労働力の不断の売買が行われている。

 

しかし、形式ではなく内容の方をみると、そこにはアンフェア、不公平な光景が広がる。

 

何がアンフェアな内容かと言えば、資本家が、絶えず等価なしで取得する他人の労働の一部を、それよりも多量の生きている他人の労働と取り換えているからだ。

 

つまり、資本家は不払い労働を搾取し続け、獲得した剰余価値を再投資し、資本を増やし続けているのである。

 

 

さらにマルクス


所有権、私有の法則は、所有と労働の分離に行き着くと主張する。

 

所有権は、資本家サイドでは、他人の不払い労働またはその生産物を取得する権利として現れる。

 

労働者サイドでは、彼自身の生産物を取得することの不可能性として現れる。

 


この内的な不可避的弁証法(形式と内容の乖離)は、


労働力が労働者自身によって商品として自由に売られるようになれば、不可避的になる。


資本制的生産様式とは、商品経済(あらゆるもの商品によって媒介されており、貨幣を使って商品を買うことにより社会活動が媒介される)が優位の経済システムである。


商品生産が全社会に普及するのは、賃労働がその基礎におかれた時である。


それと同時に、商品生産の所有法則が資本主義的取得法則に転化する。


つまり、賃金労働者は自ら生産手段を持っていないので、商品を買うことによりはじめて自分の生活を維持していける。


商品を買うための貨幣は、自らの労働力を売った対価として受け取る。


労働力を商品化する人が多数派になると、商品経済が優位になり、所有法則が社会の隅々まで貫徹し、資本制的生産様式が出現する。


どの生産物もはじめから販売のために生産されるようになり、いっさいの生産された富が流通を通るようになる。


要するに、サラリーマン的なライフコースの一般化すると、商品経済が支配的な形態になるのだ。

 

 

 

資本論の全体像】
第1部 資本の生産過程
第2部 資本の流通過程
第3部 資本主義的生産の総過程 1、2巻の理論がどう現実の中で顕在化するか、および利潤の分配についての考察

資本論第1部 第21章 単純再生産の解説

資本論第1部 資本の生産過程

 

第7篇 資本の蓄積過程

 

第21章 単純再生産

 


 

第21章単純再生産の解説。

 

まず資本の蓄積過程の分析を始めるにあたり、マルクスは議論の前提を明示する。

 

蓄積過程の純粋な分析のために、

 

その内的営みを一切覆い隠す現象を無視する必要がある。


第一にここでは資本論第2部の主要テーマである流通過程については議論されない。

 

蓄積の第一の条件は、資本家が商品を売ることである。

 

そして、こうして手に入れた貨幣を再び生産のために投下することである。

 

これは流通過程で起きるわけであるが、ここでは流通過程については議論されない。


資本家は自分の商品がその価値どおり売ることができることを前提にしている。

 


また、資本論第3部の主要テーマである資本の分割、


つまり企業利益(産業資本の収益)、商業利潤、利子、地代へ分割は議論されない。


議論の前提を明確化した後、第21章単純再生産についての議論がスタートする。

 


まず、再生産過程は恒常的(constant)である必要がある。

 

連続的である必要があり、周期的に同じ諸段階を通らなければならない。

 

社会は消費を辞めることができないように生産を辞めることはできない。

 

そして、もし生産が資本主義的形態であれば、再生産も資本主義的形態である。

 


単純再生産とは何か?


同一規模の生産の繰り返しである。


剰余価値は周期的に獲得されながら、それが全部消費される。

 


資本主義的生産様式の再生産過程とは、

 

この経済システムの前提の再生産である。


その前提とは、

 

生産手段を持つ資本家と生産手段を持たない賃金労働者の対立的な階級関係である。


再生産過程とは、


単に商品を生産し、剰余価値を生産するだけでなく、労働者の搾取条件、

つまり資本関係そのものを再生産する。


資本主義的生産とは労働力と労働条件の分離を不断に再現し、

 

労働者の搾取条件を繰り返し準備する。

 

 

 

資本論の全体像】
第1部 資本の生産過程
第2部 資本の流通過程
第3部 資本主義的生産の総過程 1、2巻の理論がどう現実の中で顕在化するか、および利潤の分配についての考察

資本論第1部 第20章 労賃の国民的相違の解説

資本論第1部 資本の生産過程

 

第6篇 労賃

 

第20章 労賃の国民的相違

 

国民文庫版では第3巻にあたる。

 


第20章労賃の国民的相違の解説。


労賃の国際比較の前提。


労働力の価値の大きさの変動を規定するすべての契機を考慮しなければならない。


全ての契機とは以下の項目を含む。


自然的、歴史的に発展した第一次生活必需品の価格と範囲、労働者の養成費、婦人・児童労働の役割、労働の生産性、労働の外延的および内包的大きさなど。

 

まったく表面的な比較のためにも、


まず第一に、


各国における同じ産業の平均日賃金を同じ長さの労働日に還元することが必要。

 

例えば、A国では1日10時間働き、1万2千円

 

対して、B国では1日10時間働き、6千円という風に。

 


さらに日賃金を調整してから、時間賃金を出来高賃金に換算しなければならない。


労働の生産性についても、


労働の内包的な大きさについても計測器になるのは出来高賃金だけだからである。

 

出来高賃金に変換しているのだから、労働の強度がモノを言ってくる。


労働の強度の平均は、各国で違う。


イギリスに代表される当時の資本主義先進国の労働は、

 

他国の労働に比べて、強度の大きい国民的労働としてカウントされる。

 


これはいわゆる特別剰余価値のようなものであり、


商品の販売価格をその価値まで引き下げることを競争によって強制されない限り、


賃金(労働力の価値の現象形態)を出来高賃金ベースで考えた時の、

 

生産性の高い労働者に値する。


これがイギリスの賃金水準が高い理由その1となる。

 


続いて、

 

マルクスは資本主義が発展している国の方が貨幣の価値が相対的に低いと論じる。

 


『貨幣の価値が相対的に低い』とはどういう意味か?


例えば、先進国イギリスでは1日12時間労働で労働者一人あたり1万2千円分の商品を生産するとする。


フランスやスイス、つまり相対的な後進国では、1日12時間労働で6千円分の商品を生産する。


イギリスでは、12時間で1万2千円

フランスやスイスでは12時間で6千円。

 

逆に言えば、イギリスでは、千円で1時間の労働(交換価値の源泉は労働)しか購入できない。

 

フランスやスイスでは千円で2時間の労働を購入することができる。

 

つまり、イギリスでは、貨幣の価値が相対的に低いのである。

 

ゆえに、イギリスではより多くの名目賃金がなければ労働力の再生産ができない。


これがイギリスで賃金が高い理由その2。

 


また、資本主義先進国の方が、

 

剰余価値に比べての労働の価格、生産物に比べての労働の価格が安い。


なぜなら、資本主義先進国では、


総労働における必要労働の比率が小さく、剰余価値率が高い。


つまり、いわゆる相対的剰余価値が高い。


換言すれば、資本の有機的構成(技術的構成)が高く、労働者一人当たりの生産性が高いからである。

 

 

資本論の全体像】
第1部 資本の生産過程
第2部 資本の流通過程
第3部 資本主義的生産の総過程 1、2巻の理論がどう現実の中で顕在化するか、および利潤の分配についての考察

資本論第1部 第19章 出来高賃金の解説

資本論第1部 資本の生産過程

 

第6篇 労賃

 

第19章 出来高賃金

 

 

 

 

資本論第1部、第19章、出来高賃金の解説を致します。

 


出来高賃金は、時間賃金の転化形態である。

 

 

つまり労働力の価値の現象形態が時間賃金であり、

 


時間賃金は出来高賃金の転化形態である。

 

 

例えば、時間賃金で12時間中6時間が、不払い労働である。

 


剰余価値率(不払い労働/必要労働)は100%である。

 


この場合、労働がその直接的な持続時間で計られる。


これを出来高賃金に転化してみよう。

 


平均すると12時間に24個の製品を作るとする。

 

剰余価値率は100%であるから、


そのうちの12個が不払い労働となる。

 


出来高賃金では、

 

一定の持続時間中に労働が凝固する生産物量で労働が計られる。

 


個々の労働者の能力差はあるが、


支払われる総賃金では、

 

個別の賃金の高い低いは相殺されるので、その産業部門の平均賃金になる。

 

 


出来高賃金では二つの基本的な形態がある。

 

⑴仲介人が資本家と労働者の間に入るケース。


この形態は仕事の下請け容易にする。

 


⑵資本家が主要な労働者と出来高あたり幾らという価格契約を結ぶケース。

 


主要労働者とは、マニュファクチャでは組長、鉱山では採炭夫など。

 

出来高賃金は資本主義に適した賃金形態である。


まず、

 

製品の良し悪しで賃金を評定することによって、


「賃金減額および資本主義的ごまかしのきわめて実り豊かな源泉」となる。


また、労働の質や強度が労働の形態そのものによって制御される。

 

これにより労働監督が不要になる。

 

これは近代的家内労働の基礎をなすと同時に、


搾取と抑圧との階層生的に編成された制度の基礎をなす。

 


さらに、出来高賃金は、労働の標準強度を高くすることを容易にする。

 

長時間労働を労働者が自ら進んでやるようなる。

 

さらに、労働者同士の競争を発達させる。

 

これは労働者の個性、自由、独立心、自制心を発達させる。

 

また、ある作業のために実際に必要なよりも多くの労働者が雇われうる。


必要よりも多く雇ったとしても、

出来高賃金であれば実際に使わなければ、労賃を支払う必要もない。

 

結論として、出来高賃金は、資本主義的生産様式にもっとも適応した労賃形態である。

 

 

資本論の全体像】
第1部 資本の生産過程
第2部 資本の流通過程
第3部 資本主義的生産の総過程

資本論第1部 第18章 時間賃金の解説

資本論第1部 資本の生産過程

第6篇 労賃

第18章 時間賃金

 

国民文庫版では第3巻に該当します。

 

 

 

 

そもそも、賃金つまり労賃自体は、労働力の価値の現象形態である。

 

労働力の価値(交換価値)とは、3つの要素によって決まる。

 

3つの要素とは、

 

⑴労働者自身を養う費用

 

⑵家族を養う費用

 

⑶教育費である。

 

労働力の価値とは、労働力を再生産するために必要な価値量=社会的必要労働時間である。


時間賃金は、賃金を労働の総量と具体的な比例関係で結びつけることによって、


労賃が「労働の価値(≠労働力の価値)」であり、

 

資本家が労働の全体に対して支払っているという逆立ち現象を、

 

いっそう強く裏付ける現象形態である。

 


労働とは労働力の使用価値である。


労働力の価値とは労働力の交換価値である。

 

労働力の使用価値が労働であり、


労働が時間で計量される以上、労働力の売買は、一定の時間ぎめで行われることになる。

 

同時に、労働力の日価値、週価値などは、その「時間賃金」の形態、すなわち日賃金、週賃金の形態に転化する。

 

労働の価格とは何か?


それは以下の式によって導かれる。


労働力の平均的な日価値➗1労働日の時間数


つまり


労働力の平均的な日価値/1労働日の時間数

 

つまり労働の1時間あたりの平均価格が労働の価格の尺度単位となる。


この分数の分子にあたる

 

日賃金自体は労働時間の変化に伴い、変化する場合も、変化しない場合もある。

 


日労働や週労働などの量が与えられていれば、

日賃金や週賃金は労働の価格によって定まり、

労働の価格そのものは、労働力の価値の変動につれて、

または労働力の価格が労働力の価値からずれるのにつれて、変動する。

 

 

反対に、労働の価格が与えられていれば、日賃金や週賃金は日労働や週労働の量によって定まる。

 


以下、色々な仮定を考える。

 

労働の価格が低く設定された場合。


平均賃金を確保するためだけにも、労働日を長くする必要が出てくる。


賃金が少ないので長時間労働への刺激として作用する。

 


労働時間が延長された場合。

 


労働の価格を算出する式の分母が上がったことになり、労働の価格が低下する。


これは2つの異なる事情がある。

 


労働力(労働者)の供給が変わらなくても、労働の供給は増大する。


例えば、今までは2人の労働者を要していたことが、1人の労働者のみで可能になる。

 

すると労働者間の競争が激化し、資本家は更なる長時間、低賃金労働が可能となる。

 


また、不払い労働が増大することで、剰余価値率が増大し、商品の価格が低下する。


ゆえに安価な商品価格が固定化し、

 

過度な労働時間の元での低賃金の不変な基礎になる。

 

最後にマルクスは、

 

資本家の頭の中には剰余労働時間という概念は存在しないと主張する。


なぜなら、彼が日賃金の中に含めて支払っている標準労働時間の中に含まれているからである。


資本家としては正当な賃金を支払っているものと思っているわけである。

 

 

 

資本論の全体像】
第1部 資本の生産過程
第2部 資本の流通過程
第3部 資本主義的生産の総過程 1、2巻の理論がどう現実の中で顕在化するかを記述。